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StewartMcLarenが分かりにくい株価算定やM&Aについて日々お答えします。

有償ストックオプションとは

更新日:2023年10月25日


今回様々なストックオプションの中でも、税務上のメリットなどから採択する企業が増え、注目され始めた「有償ストックオプション」について解説します。


有償ストックオプションとは?

公正価格で新株予約権を購入し、権利行使価額と権利行使時点の株価との差額で利益が得られるという制度です。

①従業員は発行価額を払い、有償ストックオプションを購入。企業は有償ストックオプションを従業員に発行。

②あらかじめ付した業績・株価条件のハードルを企業が達成。

③従業員は、行使価額を支払い、有償ストックオプションを株に転換。


次に、発行価額、行使価額についてみていきましょう。


発行価額について


有償ストックオプションにおける「発行価額」とは、ストックオプション1個あたりの価値のことです。

有償ストックオプションを購入する従業員は、この(発行価額)✕(購入するストックオプションの数)分の金銭を会社に支払う形になります。


【発行価額の算定方法】 

①ストックオプションの公正価値の算定 

②条件付けによる払込価格の引き下げ の2つのステップに分かれています。


①ストックオプションの公正価値の算定

発行価額の算定の際、まずは今の株価などから将来の株価を予測することで、ストックオプションの公正価値を算定します。予測方法の代表的なものとしては、何通りもの事業計画をシミュレーションする「モンテカルロ・シミュレーション」や類似企業の株価のボラティリティから予測する「ブラックショールズ式」、将来の変動を格子状に設定する「二項三項モデル」などがあります。これらの算定方法により、ストックオプションの公正価値は株価の40~60%程度となることが多いです。


②条件付けによる払込価格の引き下げ

①で計算した公正価値よりも、実際に支払う発行価額を引き下げることができます。

業績達成条件(売上・営業利益)など、行使を制限するような条件をつけることで、ストックオプションを行使できる確率が低くなるため、ストックオプション自体の価値も下がります。


行使価額について


「行使価額」とは、ストックオプションの権利を行使する時に支払う価格のことです。


行使価額は、原則現在の株価以上で設定します。基本的には直近の普通株での取引実例が現在の株価となりますが、直近に取引がないなどで算定が必要になった場合には、DCF・マルチプル・純資産法などの算定方法により算出した株価を時価とし、それ以上で行使価額を設定します。



有償ストックオプションのメリット

税務面で有利になる(税率が軽減される)

税制適格要件を満たさない無償ストックオプションの場合、ストックオプションの行使時に、権利行使時の株価と権利行使価格との差額について給与所得として課税されることとなります。無償で発行・付与され、税務上労働の対価として取り扱われているためです。

一方、有償ストックオプションの場合、役員や従業員であっても適正な対価を支払った上でストックオプションを取得しているため、ストックオプションの行使時に課税されることはありません(※)。

※ストックオプションの行使時に課税される場合には給与所得課税(最大約55%)が課されることになります。一方で、行使により取得した株式の売却時(譲渡時)の課税については、譲渡所得課税(最大約20%)とされています。

付与対象者のモチベーションの向上につながる

有償ストックオプションの場合、権利を行使するための条件(例えば、1年後に売上10億円等)が設定されることとなり、条件を達成しないとストックオプションを行使することができません。そのため、付与対象者において、会社の業績を向上させることについてインセンティブが働きます。


社外協力者に対して付与することも可能である

有償ストックオプションには、税制適格ストックオプションのような人的要件が課されておらず、社外協力者に対して付与することも可能です。そのため、外部から優秀な人材を登用したいが雇用するほどの資金的な余裕のない企業においては、資金の流出なく、優秀な人材の協力を得ることができます。

役員に付与する場合であっても報酬決議が不要

有償ストックオプションのデメリット

手元資金に余裕がないと利用できない

ストックオプションの付与時に発行価額の払込みが必要となるため、手元資金に一定の余裕のある者でないとスキームを利用できないこととなります。ただし、有償ストックオプションの行使条件等の設計次第では、ストックオプションの公正価値(評価額)を大幅に引き下げることが可能です。

ストックオプションの公正価値の算定に一定の費用が発生する

既に述べたように、ストックオプションの公正価値については、一般の方が適切に算定することは困難であることから、税務・会計の専門家に相談する必要があります。有償ストックオプションを発行することによるメリットをしっかりと検討した上で、発行の有無を判断する必要があります。

行使条件を達成しないと行使できない

有償ストックオプションは、行使条件を定めることで公正価値を下げて、付与対象者の金銭的な負担を減らすことができます。もっとも、行使条件が厳しすぎると、会社が当該条件を達成することができず、結果としてストックオプションを行使できなくなるリスクがあります。

行使条件を厳しくすれば厳しくするほど公正価値が下がり、付与対象者の金銭的な負担は減りますが、その分行使できなくなるリスクが高まりますし、達成が困難な条件が設定されてしまうと付与対象者にとってインセンティブが働かなくなる可能性があるので、このあたりのバランスは非常に大事になってきます。



StewartMcLarenでは、新株予約権の評価のみならず、その発行手続や導入事例などに関する適切なアドバイスを実施することが可能です。有償ストックオプションの発行を検討している方、有償ストックオプションに限らずインセンティブ設計に関して疑問点をお持ちの方がいましたら、お気軽にお問い合わせください。


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