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ストックオプションとは

更新日:2021年9月6日


「ストックオプションについて聞いたことはあるものの、具体的にどのような制度なのかよくわからない」といった方も多いのではないでしょうか。こちらのコラムでは、ストックオプション制度の概要や、ストックオプションの種類、メリット・デメリットをみていきます。


ストックオプションとは?

株式会社の従業員や取締役が、自社株をあらかじめ定められた価格で取得できる権利です。

まず、会社側が、あらかじめ定められた金額(権利行使価格)で会社の株式を取得できる権利を、従業員や取締役に対し付与します。従業員や取締役は、株価が上昇した時点でストックオプションの権利を行使します。その際、会社の株式を権利行使価格で取得し、その後、時価で株式を売却します。結果、権利行使価格と株価上昇分の価格との差が、利益として得られるという報酬制度です。従業員や取締役への報酬額は、その会社の業績向上による株価上昇と連動するため、ストックオプションの権利を付与された側にとって、ストックオプションは業績向上したときの、実質上のインセンティブにもなります。ストックオプション制度は、アメリカで始まった制度です。日本では、1997年5月の改正商法において、ストックオプション制度が認定されました。


詳しく理解するために、ストックオプションの例を見てみましょう。


ストックオプションの例

「今後10年間、1株500円で自社株を購入できます」という条件のストックオプションを考えてみます。株価が上がっても、10年間はその価額で購入できます。自社の株価が1,000円になったときに1,000株購入して、すぐに売るとすると、


購入価額:500円×1,000株=500,000円

売却価額:1,000円×1,000株=1,000,000円


と50万円の利益が得られます。逆に株価が下がったら、権利を行使しない選択ができるので、損失を被ることはありません。


ストックオプションの種類

信託型ストックオプション

委託者(オーナー経営者等の第三者)と受託者との間で信託契約を締結し、その後に受託者から信託された金銭を発行会社に払い込み、受益者(役職員等)に客観的な業績評価に基づいて新株予約権を配るスキームです。通常のストックオプションが会社から直接給付されるのに対して、このタイプは会社と従業員との間に受託者を挟んで間接的に給付されることになります。時価発行新株予約権の付与対象者および付与規模を『後決め』することができる点が特徴です。

有償型ストックオプション

新株予約権を発行時の価格で発行し、権利行使時に価格が上がっていれば、その差額を自身の利益とすることができます。新株予約権の発行価格分の金銭を払い込むことにより新株予約権を購入することになります。

株式報酬型ストックオプション

新株予約権を発行してもらい発行価格と行使価格の差が利益になる点は②のタイプと同じですが、この株式報酬型ストックオプションの場合②のタイプとは異なり、行使価格が1円に設定されている1円ストックオプションと呼ばれるタイプのものがあります。


ストックオプションと税金の関係

ストックオプションには税制適格と税制非適格の2種類があり、それぞれ税金の扱いが異なります。

税制適格になるためには、発行内容や取得者の身分、権利行使に関する要件を満たさなければなりません。


税制適格ストックオプション

税制適格要件を満たす新株予約権であり、役員・従業員向けのインセンティブプランとして用いられます。税制適格ストックオプションの場合、税金がかかるのは株式を売却したときのみです。売却して得られた利益に対して20.315%の税金(申告分離課税)がかかります。譲渡所得としての確定申告が必要です。


【税制適格要件の要約】

①発行価額:無償発行

②行使価額:発行時の時価以上

③付与対象者:会社及びその子会社の取締役・執行役・使用人

④権利行使期間:付与決議日後、2年を経過した日から10年を経過する日まで

⑤権利行使限度額:年間1,200万円まで

⑥譲渡制限:譲渡禁止

⑦保管委託:証券会社または金融機関等による保管・管理信託等


税制非適格ストックオプション

税制非適格ストックオプションでは、権利を行使したときと売却したときの2回、税金がかかります。権利を行使したときは給与所得としての総合課税、売却したときは譲渡所得としての申告分離課税です。


総合課税は所得金額により税率が上がるため、高額な税金がかかることもあります。権利を行使した直後に株価が下がって塩漬けにする場合も、一度は税金を納めなければなりません。税制適格ストックオプションなら利益が出たときだけ20.315%が徴収されるので、税制上優遇されているといえます。



ストックオプションのメリットデメリット

ストックオプションを付与された人、企業にはそれぞれどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。


◯ストックオプションを付与された人にとってのメリット・デメリット

【メリット】

・会社に対する貢献が正当に自己の利益に反映される

自己の頑張りが株価に反映され、株価の上昇が自己の報酬に繋がる為、成果が正当に報酬につながると言えます。

・自己資金で直接株式を保有するよりもリスクが少ない

直接自社の株式を保有すれば当然株価が下落した時には損失を被る可能性がありますが、新株予約権であるストックオプションは、株価が上がった場合のみ、権利を行使すれば良いのであって、株価が下落した場合には権利行使をせずにいれば損失を被ることはありません。


【デメリット】

・自社の業績や成長性以外の要因による株価変動が、将来の報酬に影響を与えるリスクがある

例えば、どんなに経営努力を行い新技術・新商品を開発してきた経営者も、経済全体が落ち込んでいる時期に企業固有の要因以外で株価が下落してしまえばどうしようもありません。このように報酬が、自社の業績など以外、つまり従業員等努力の影響範囲外のところから影響を受ける可能性があります。


◯企業にとってのメリット・デメリット

【メリット】

・ストックオプションを付与された取締役や従業員の経営参画意識の向上

付与対象者の取締役や従業員は自社の株主となり、株主価値が自己の報酬に影響するようになるため、株主に損失を与えるような行動は避け、株主価値・企業価値の向上を目指して行動をするようになることが期待されます。


・成果報酬主義の導入

取締役や従業員の報酬は会社の成績が反映される株価に連動することになるため、あらかじめ定めた額の賞与などではなく、会社の市場価値が向上した場合に、その上昇分だけ報酬を与えるという成功報酬型にすることができます。


・優秀な人材の確保、流出の防止ができる

現時点で取締役や従業員に現金を支払う必要がないため、財務の余裕がなくても将来的なインセンティブを絡めて優秀な人材を集めることが可能です。優秀な幹部候補を採用したい反面、現状大手企業並みの報酬を確約することができず、その差を埋めるためにストックオプション制度を導入するケースが数多く見られます。


【デメリット】

・経済状況やストックオプション制度が未熟なものであると制度の導入効果が得られず、むしろ経営にとってマイナスの影響が生じるリスクもある

また、「誰にストックオプションを付与するのか」によって、社内での不公平感が生じるおそれもあります。例えば、明確な理由を示さず一部の社員にだけストックオプションを付与した場合、その権利をもらえなかった社員の士気が下がりかねません。そのため、一定の条件を明示した上で対象者は慎重に選ぶことが求められます。



最後に、ストックオプション導入における注意点についてまとめます。


・上場企業にストックオプションは向いていない

ストックオプション制度は、株価が大幅に上昇することがなかなか無い上場企業にはあまり向いていない施策です。ストックオプションに向いている企業としては、IPOを達成する見込みが高い未上場企業が挙げられます。

企業によって向き不向きがある施策であることに注意しましょう。


・ストックオプションを発行し過ぎてはいけない

ストックオプションを多く発行しすぎると、上場後に大量のストックオプションが行使されて株式が大幅に増加してしまう可能性があります。1株当たりの利益が低下し、株価全体の価格が下がってしまう可能性が高いため、発行量は発行済株式数の10%前後ぐらいにすることが理想でしょう。


・税制適格ストックオプションの要件を満たすようにすべき

権利を行使する際に不具合が発生する可能性もあるため、注意が必要です。


ここまで、ストックオプションについて説明してきました。

ベンチャー企業をはじめとする未上場企業にとって、優秀な人材の確保や引き留めは重要な問題となっています。そのため、ストックオプションを導入することは有効な1つの施策と言えるでしょう。


本コラムの内容を参考に、ストックオプション制度をしっかりと理解したうえで導入を検討してみてください。

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